2025.12.27

遺言書がある場合、相続税はどうなる?計算や手続きの流れを解説

税理士 小山寛史
税理士 小山寛史

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はじめに

「遺言書があると相続税はどうなるの?」

そんな疑問をお持ちの方は多いでしょう。遺言書があっても相続税の仕組みそのものは変わりません。

ただし、「誰がどの財産を受け取るか」によって、相続税を払う人や金額が変わることがあります。

この記事では、遺言書がある場合の相続税の考え方と、手続きの流れをわかりやすく説明します。


遺言書と相続税の仕組み

遺言書とは、被相続人(亡くなった方)が、自分の財産を「どの財産を」「誰に」「どれだけ」分けるかを示す意思表示です。遺言書があることで、被相続人の希望に沿った分配を実現しやすくなります。

一方、相続税は「財産を実際に受け取った人」に課される税金です。つまり、遺言によって財産の受け取り方が変わると、相続税を負担する人や金額も変わります。

たとえば、遺言書で「自宅は長男に、預貯金は次男に」と指定されていれば、それぞれが受け取った財産の金額に応じて相続税が計算されます。

相続税法では、「相続や遺贈により取得した財産」に課税されると定められており(相続税法第1条)、“誰がどれだけ受け取るか” によって相続税の負担額が決まります


遺言で決まる相続税の負担者と計算ルール

遺言書により「長男に財産をすべて相続させる」と指定されていた場合、相続税は長男が全額負担します。また、「孫に遺贈する」といった場合は、孫が相続税の負担者になります。

ただし、子がすでに亡くなっている場合を除き、孫は通常、法定相続人ではないため相続税の2割加算というルールが適用されることもあります。

亡くなった方の配偶者または一親等の血族(子・父母)以外の相続人でない方が財産を取得する場合は注意が必要です。

相続税の計算には次のような基本ルールがあります。

  • 基礎控除額:3,000万円+600万円×法定相続人の数
  • 税率:法定相続分を基準に計算し、取得額に応じて10%〜55%
  • 申告期限:相続開始(死亡)を知った日の翌日から10か月以内

遺言の内容に沿って分けるのが原則ですが、相続人同士の話し合い(遺産分割協議)で遺言と異なる分け方をすることも可能です。

その場合、税務上は「遺言ではなく実際に受け取った人」が相続税の負担をします。


遺言書がある場合の手続きの流れ

遺言書には大きく分けて、被相続人が自ら書く「自筆証書遺言」と、法律の専門家である公証人が作成する「公正証書遺言」があります。

被相続人の遺言書が自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所での検認手続きが必要です(公正証書遺言、または自筆証書遺言でも法務局での遺言書保管制度を利用している場合は検認は不要)。

その後、遺言の内容に基づいて相続人や遺言執行者が手続きを進めます。
手続きの流れは以下の通りです。

  1. 遺言書の確認・検認
  2. 遺言執行者による手続き開始
  3. 相続人や受遺者が財産を受け取る
  4. 相続税を申告・納付(相続開始(被相続人の死亡)から10か月以内)

なお、遺言書に「不動産を売却して現金で分ける」などの換価遺言がある場合、
その売却益に譲渡所得税がかかるケースもあります。


専門家に相談した方がいいのはどんなとき?

遺言書があっても、すべてがスムーズに進むとは限りません。

次のようなケースでは、専門家への相談を強くおすすめします。

  • 遺産総額が基礎控除を超えそうなとき
  • 遺留分(相続人の最低限の取り分)をめぐる争いが起こりそうなとき
  • 遺言の内容が複雑、または不動産・自社株が含まれているとき
  • 遺言執行や登記などの手続きが煩雑なとき

それぞれの専門家の役割は以下の通りです。

  • 税理士:相続税の計算・申告・税務相談のサポート
  • 弁護士:遺留分・トラブル対応
  • 司法書士:登記・相続手続き代行

おわりに

遺言書は、相続の方向性を明確にして家族の争いを防ぐ大切な手段です。

ただし、遺言の内容によっては、思わぬ税負担が発生することもあります。

ご家庭の事情や財産の構成によって最適な対策は異なりますので、実際の相続や遺言書の作成を検討されている方は、ぜひ専門家にご相談ください。


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